医療での認知症対応

認知症

医療機関での早期発見・早期対応

疑わしい場合、医療機関への受診・早期発見に努め、早期対処が重要

  • 認知症老化による物忘れは、区別しにくい
  • 単なる老化として放置し悪化させたり、高齢者のうつ病など、別の病気を認知症と誤って対応しない
  • 症状が見られたら、専門外来や物忘れ外来などを受診する

医療機関を受診する症状

  • 遅刻をしなかった人が、約束の時間や待ち合わせに遅れるなどの、時間の感覚の異常
  • 手際が分からなくなり、段取りがうまくいかないことが多くなった
  • これまで難なくこなしてきたことに戸惑いが生じてきた

認知症の専門外来や物忘れ外来の診察・検査

  • 認知症が疑われる症状が見られたら、認知症の専門外来や物忘れ外来などを受診する
  • 病院によって検査の方法に違いはあるが、一般的には以下のような診察・検査が行われる
  • 専門医による聞き取り、状態の診察を行こない、問診を経て医師が判断し、以降の検査を行う

問診による認知症検査

心理状態を確認するための心理検査なども行う場合もある。なお、病院では、これらの検査をすべて行うわけではなく、症状や問診の内容等に基づいて、必要な検査を行う。

画像検査

認知症の原因を調べるために、頭部の状態を見られるCT・MRIなどの画像検査、PET(脳の糖代謝検査)、SPECT(脳の血流の検査)など。

また、レビー小体型認知症の診断のために、パーキンソン病の診断に利用される「MTBG心筋シンチグラフィー」という検査が行われる場合もある

血液検査・尿検査

合併症による甲状腺の低下などを起こしていないか調べるために、血液検査・尿検査を行うこともある。

認知症へ早期対処

認知症を根本的に治す薬は今のところはないが、進行を遅らせたり、一部の症状を改善することができる。

アルツハイマー型認知症の薬

徘徊・妄想・抑うつ・意欲の低下

期待効果

脳を活性化させることで、気力の回復を図る

  • アリセプト…アルツハイマーの代表的な治療薬💊副作用…嘔吐・吐き気・食欲不振・下痢・興奮・イライラ
  • レミニール…アルツハイマーの進行を食い止め、周辺症状の緩和💊副作用(量を増やしたときに現れやすい)…吐き気・食欲不振・めまい・下痢
  • イクセロンパッチ・リバスタッチ…貼り薬で、吐き気や嚥下障害でも使える💊副作用…皮膚のかぶれ・かゆみ・嘔吐
  • 抑うつ薬…幸せホルモンや興奮ホルモンを分泌させ、脳を活性化させる💊副作用…不安感・めまい・ふらつき・嘔吐・吐き気・下痢・頭痛

興奮・攻撃性・イライラなど

期待効果

脳の神経バランスを整えることで、気持ちを穏やかにさせる

  • メマリー…脳内の神経バランスを整える(中度~重度の認知症に用いられる)💊副作用…めまい・眠気・食欲不振・便秘
  • 抗不安薬…向精神薬の一種で、神経伝達物質に作用し不安や緊張を和らげる💊副作用…めまい・ふらつき
  • 漢方薬…「抑肝散」がよくつかわれている💊副作用…吐き気・食欲不振・下痢・発疹

血管性認知症の薬

血管性認知症は、脳の一部損傷が原因なので、再び脳梗塞や脳出血を起こさないよう、損傷が広がらないよう予防することが重要で、脳梗塞や脳出血の要因となる高血圧、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)などを抑える薬を対処療法として使用します。

行動・心理状態を抑える薬

認知症の行動・心理症状による妄想・興奮・攻撃性・抑うつ症状・躁症状および不眠などには、それぞれの症状に応じた薬が使用されます。

副作用の対処法

服用回数を重ねるにつれ、副作用が収まることが一般的だが、副作用が出た場合は、自己判断せず、かかりつけ医の指示に従うこと。

  • 薬を増やす…副作用が収まるのを待って、処方薬の量を増やす場合もある
  • 薬の種類を変える…体質に合わない場合もあるので、薬の種類を変更する前、1~2週間程度様子を見ることがある
  • メマリーを併用する…メマリーは比較的、副作用が軽いのが特徴で、副作用がひどい場合はメマリーを代わりに用いることがある。ほかの薬を減らし、メマリーを併用して薬効を促す

認知症を改善する療法

環境調整

  • 認知症の症状に合わせ、日常生活する上での環境を整えていく
  • 認知症の人が、現状保たれている機能や能力が発揮でき、心身ともに安全で快適に過ごせるよう、環境を整える

回想法

方法…昔の懐かしい写真や音楽、昔使っていた馴染み深い家庭用品などを、見たり触れたりしながら、昔の経験や思い出を言葉にして語り合う心理療法。

効果…保持されている記憶を思い出して言葉にしたり、相手の話を聞いて刺激を受けたりすることで、脳が活性化し、活動性・自発性・集中力の向上や自発語の増加が促され、認知症の進行の予防になる。

音楽療法

方法…受動的音楽療法…認知症の人の記憶に残る歌やクラッシックなどの音楽を、食事の時間や日常の介護の時にBGMとして流す。

方法…能動的音楽療法…本人が動揺や唱歌を歌ったり、楽器や鈴、タンバリンなどを演奏する。

効果…不安や痛みの軽減、精神的な安定、自発性・活動性の促進、身体の運動性の向上、表情や感情の表出、コミュニケーションの支援、脳の活性化、リラクゼーションなどの効果がある。

効果…興奮などの行動・心理症状が表れにくくなった。精神的にリラックスし、食事をとる量が増えた。などの効果が報告されている。

光療法

方法…太陽光や、同等の光を浴びることにより体内時計を調節して、睡眠、覚醒リズムを改善し睡眠障害を軽減させる療法。

効果…睡眠障害とともに、そのほかの症状にも改善がみられる報告もある。

ペット療法

方法…犬や猫などの身近なペットに触れたり、一緒に遊んだりすることにより、情緒の安定などを図る治療法。

効果…興奮などの行動・心理症状を軽減させる効果がある。

アロマ療法

方法…アロマセラピーにより、嗅覚を介して直接記憶をつかさどる海馬を刺激し、機能を回復させる療法。

効果…香りの持つ精神の鎮静効果により、睡眠障害の改善も期待できる。

活動療法

方法…体操やダンス、または身体の基本的な動作を保つための運動などを行う。

効果…興奮などの行動・心理症状を軽減させる効果や、運動機能・心肺機能の改善や維持が期待できる。

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