認知症と軽度認知障害サポートするときの心構え
- 人と人とのコミュニケーションという気持ちを忘れない
- 「やってあげる」のような、上から目線やぞんざいな態度をしない
- 尊厳を傷つけないように気を付ける
- 「できないことを、できないときに、お手伝いさせていただく」という気持ち
- 日や時間によって症状が異なることを忘れない
- 中核症状や二次的症状(行動・心理症状)にうまく対処することが必要
- 意識がはっきりしていて、表情も明るいときもある
- 症状が強く出て表情が消えて辛そうな時もある
- 人が変わったように暴言を吐いたりすることもある
- 中核症状や二次的症状(行動・心理症状)にうまく対処することが必要
- 本人が一番つらいことを忘れない
- サポートする側に思いが届かず歯がゆく思っているかもしれない
- コミュニケーションが取れず、悲しい思いをしているかもしれない
- 感情に寄り添う
- ひとりで解決しようとせず、周囲の人に相談したり助けを求める
- 時には専門医での診察が必要となる場合もある
認知症・軽度認知障害対応の5原則
- 否定しない
- 叱らない
- 無視しない
- 嘲笑しない
- ばかにしない
認知症・軽度認知障害へのコミュニケーション方法
- 会話する時は、向き合って、顔の表情や口元が見えるように話す
- 笑顔でうなずいたり、アイコンタクトで相手が安心して話ができるように心掛ける
- あいまいな表現(あれ、それ、これ)による会話は避け、具体的に話す
- 会話中、相手が時間がかかるようであれば、別の言葉に言い換えて話を投げかけてみる
- 相手のペースに合わせて話す
- 内容が理解できているかを相手の目やうなずきなどで一つ一つ確認しながらゆっくり話を進める
- 大切なことは1度だけでなく、2~3度繰り返し伝える
- 身振り手振りを交えたり、絵のカードや写真など、視覚的な材料を使って理解を促す
- 行動を迷っている様子の時は、答えを急がせず見守る
- 甲高い声は聞こえにくい上、威圧的にも感じるので、低く落ち着いた声で話しかける
- 家族以外の方なら、なるべくご本人の名前で呼びかけ、こちらの名前も繰り返し伝える
- 相手の表情や目線など、言語以外のメッセージを見逃さないように気を付ける
認知症の症状別対応
物盗られ妄想
行動・心理状態
- 置き忘れ、しまい忘れた大切なもの(通帳や財布など)を「盗られた」と思い込む
- 「家族に金を盗られた」と警察に届け出でるような場合もある
- 「通帳を盗られたので新しく作ってほしい」と金融機関を訪れ、再発行を求める場合もある
対応
- 肯定も否定もせず、「それは大変ですね」などと同意し話を聞いてあげる
- まず「一緒に探しましょう」と声をかけてから一緒に探す
- 見つかったときは、「ありましたよ、よかったですね」と、声をかける
- 症状が出ている時は、興奮していることが多いので、探しながらテレビ番組の話など、別の話題を変えてみる
- (盗んだと)疑われても、言い争いは避け、落ち着いて話を聞いてあげる
- 頻繁に症状が出る場合、薬の少量投与で改善することもあるので、医師に相談することもできる
幻覚
行動・心理状態
- さまざまな種類の認知症にみられ、高齢者の幻覚の多くは幻視を訴える
- 原因は、意識障害によることが多く、物事をきちんと捉え、正しく理解することができない
- 特に、レビー小体型認知症では、はっきりとした幻視を訴えることがある
対応
- すぐに効果がでる治療はなく、訴えを否定せず見守る
- 薬の服用によって、幻視が生じる場合もあるので、服用する薬が多いときは処方した医師に相談し薬を調整してもらう
- ごくまれに、音楽性幻聴を訴える人がいる。民謡や動揺などが聞こえてくるという症状で、本人が不快と感じていないのであれば、薬による治療は必要ない
- それぞれの症状に合わせた対応を知っておくことが大切
不眠
行動・心理状態…夜間眠れない、早朝に起きるなど、昼夜の取り違えによって起こる
対応
- 日中(できれば朝)に、十分な日光を浴びて、適度に運動した後、午後2時ごろに30分ほどの短い昼寝をさせ、就寝前にぬるめのお湯で入浴させることにより、自然の睡眠を促すためにも、一日の過ごし方を検討することが大切
- 一般的に、高齢者は寝付くまでに時間がかかり、睡眠中に覚醒することが多く、早朝に目を覚ます傾向がある。就寝時間を遅らせるなど調整することにより改善する
- 症状の改善のため、睡眠薬を医師から処方してもらう方法もあるが、夕食後や就寝前に服用し、効きすぎて翌日のリズムが狂うことがある。薬を服用する場合、時間を調整することも大切である
過食
行動・心理状態
- 記憶力の障害から、食べたことを忘れてしまうことに原因がある
- いくらでも食べたがり、たくさん食べては下痢を繰り返すなど、対応が難しい
対応
- カロリーの少ない、または少量の間食を用意する
- 別のことに興味をひいて食欲の気をそらせる
徘徊
行動・心理状態
- 最初は目的を持って出かけるが、結局迷ってしまう
- 目的を忘れ、目的なく歩き回る
- 思い出を求め歩き出すが、記憶障害でさまよってしまう
- 季節や場所によっては、生命を危険にさらすこともある
対応
- 一緒に歩いてみる
- 話しながら歩き、さまよう原因を探したり、会話を楽しんで気分転換を図る
- 忘れやすい特性をうまく利用できて、穏やかに帰宅できる場合もある
- 迷子になったときのために、衣服に名前と連絡先などを示すものをつける【注意】悪質な訪問販売などに利用されないよう、上着の内側など、見えないところにつける配慮が必要
- GPSを利用した見守りシステムもある
失禁
行動・心理症状
- 尿意を感じないことが原因の場合がある
- 排尿の準備に手間取って間に合わないなど、さまざまな要素がある
対応
- 病気や薬が関係していることが多いので、まず泌尿器科を受診する
- 高血圧症で利尿剤での尿が出やすい場合は、医師に失禁のことを伝え、薬の調整をしてもらう
- 着脱しやすい衣服や下着の着用
- 一定の時間間隔でトイレに誘導する
- 正常圧水頭症認知症は、尿失禁が認知障害、歩行障害と並ぶ症状で、尿失禁に気が付いたら直ちに受診が必要で、手術で症状の改善も期待できる
不潔行為
行動・心理症状…パンツやおむつの中の排せつ物が不快で、自分で処理しようとし、便をいじる
対応…排泄の時間帯がわかっている場合は、時間を見計らってトイレや便器に誘導する
夕方症候群(夕暮れ症候群)
行動・心理症状…日中は穏やかでも、夕方から夜間にかけて精神症状が急激に悪化し、徘徊したり、ときには興奮して不安定になる症状
対応
- 日が陰るころから、漠然と不安な様子をみせる時は、日照時間との関係がみられる
- 日が陰る少し前に、照明の点灯などで症状が改善される場合もある
- 女性の場合、習慣で食事の準備が気になり不安定になることが多く、「今晩はみんなで外食ですよ」などと声掛けすると安心する場合もある
異食
行動・心理症状
- 食品と食品でないものの区別がつかず、食べられないものを食べてしまう症状
- 側頭葉の障害に特異的な症状で、考えず、あたりかまわず口に入れる口唇傾向と呼ばれる
- 症状が悪化すると、身の回りにあるものを、手当たり次第に口に入れる場合がある
対応…飲み込んで生命の危険に及ぶことがあるので、周囲に口に入れやすいものを置かないなど、環境の配慮が必要
火の不始末
行動・心理症状…二つのことが同時にできず、火を使用していることを忘れるなど、記憶障害が原因で起こる
対応
- 調理など火を使用している時は、常にそばに付き添う
- 喫煙者には、喫煙を禁じれば、隠れたばこでの失火など、かえって危険な状況が発生する恐れがあるので、禁止はせず、そばで見守る対応がよい
- 付き添いができない場合、調理器具などは、簡単に着火しないようなコンロや、電磁調理器にし、ガスは屋外の元栓でとめるなどの安全対策をする
- ライターやマッチを持たせない
性的な問題
行動・心理症状…認知症が進行し、自分の年齢がわからなくなったり、抑制が効かなくなると、性的逸脱行為がみられることがある。家族もショックを受けるなど、介護施設でも対応に苦慮する症状
対応…さりげない受け答えをすると同時に、その行為の原因を探る。また、暴力的な行動の場合は、抗精神病薬や気分安定剤などの投与を検討する場合もある
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