認知症の発症別タイプと治療法
脳の委縮による発症
- アルツハイマー型認知症
- レビー小体型認知症
- 前頭側頭型認知症など
治療法
進行を遅らせる薬はあるが、根治を目的とした治療方法は確立されていない。
脳血管疾患に伴う発症
- 血管性認知症
治療法
認知機能障害や周辺症状を和らげる薬だけでなく、血圧を下げる、糖や脂質をコントロールするなどの脳血管障害の再発を防ぐため継続して服用する。
さまざまな疾患により発症
治療法
外科的処置、内科治療、薬の調節などで認知機能低下の改善をめざす。
認知症の原因疾患の特徴と症状
アルツハイマー型認知症
特徴
- 脳内のさまざまな変化により、正常な脳細胞がだんだんと減り、脳が委縮することによって引き起こされる
- 日本の80歳以上の高齢者の有病率は20%以上といわれており、世界でも一番多い認知症
症状
- 多くの場合、ゆっくり発症して進行し、徐々に悪化する
- 認知機能の全般に障害が表れ、初期から記憶障害が表れやすいのが特徴
- 運動障害は重度になるまで表れない場合もある
- 行動・心理症状では、物盗られ妄想、うつ状態、徘徊が多く見られる
血管性認知症
特徴
- アルツハイマー型に次いで多い認知症
- 脳の血管が詰まったり破れることによる、脳梗塞や脳出血によって生じる
症状
- 突然発症し、段階状に進行する場合と、ごく細い脳血管が少しずつ障害されて緩やかに発症し徐々に進行する場合がある
- 記憶障害は比較的軽く、片まひ、ろれつが回りにくいなどの身体症状を伴う
- 行動・心理症状では感情が抑えられない、意欲低下、夜間せん妄などが多くみられる
レビー小体型認知症
特徴
- アルツハイマー型と同じように、脳の変性疾患でおこる
- アルツハイマー型認知症、血管性認知症とともに3大認知症と呼ばれてる
症状
- 大脳皮質の多数の神経細胞内に「レビー小体」というたんぱく質の塊が表れる病気
- 穏やかに進行
- 初期の段階では記憶障害は目立たず、手足が震える、歩きにくい、身体が硬くなる、転倒しやすくなるなど、パーキンソン病のような症状が表れる
- 行動・心理症状では、繰り返す鮮明な幻視とその幻視に基づく妄想が多くみられる
前頭側頭型認知症
特徴
- 脳の前頭葉(人間の理性をつかさどる)と、側頭葉(言語・記憶などをつかさどる)が委縮することにより引き起こされる
症状
- 穏やかに進行し、運動障害は目立たず、記憶障害よりも、性格や行動面に大きな変化が見られる
- 万引きなどの社会性の欠如が表れ、相手に対して遠慮ができない、暴力をふるう、抑制が効かなくなる
- 同じところを歩き回る、同じ動作を繰り返すなどの行動
- 人格の変化も伴なう
それ以外の認知症の要因となる疾患
ハンチントン病
- 遺伝子に、正常時にはみられない変化が生じることで発症する神経変性疾患
- 脳の大脳基底核や大脳皮質が委縮し、実行機能や全体を把握する能力などが損なわれる傾向がある
HIV脳症
- エイズ脳症ともいい、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染末期に発症する
- 認知・運動・行動障害を中心とした進行性の認知症が特徴
- 集中力の低下、物忘れ、無気力
- 幻覚、妄想、躁鬱状態などの幅広い精神障害もみられる
クロイツフェルト・ヤコブ病
- 脳に異常なたんぱく質が蓄積し、脳神経細胞の機能が損なわれる中枢神経の変性疾患
- 発病から数か月以内に認知症が急速に進行し、半年以内に自発運動はほとんどなくなり寝たきりの状態になる
正常圧水頭症
- 脳室内に髄液がたまり、周辺の脳を圧迫することにより発症
- 認知障害、歩行障害、尿失禁の3つが主症状
- 髄液シャント術(たまった髄液の流れをよくする手術)により症状が顕著に改善する
頭部外傷
- 交通事故などで頭部に外傷を受けた後や、慢性硬膜下血腫などにより発症
- 人格変化、性格変化
- 高度な脳損傷の場合には、失語、失行、失認がみられる
甲状腺機能低下症
- 甲状腺ホルモンの不足により甲状腺機能が低下し、全身の臓器の機能低下が起こる疾患
- 末梢神経障害により、自ら進んで何かをしようとする自発性の低下、思考力の低下、記憶力・理解力・判断力の低下、抑うつ状態、幻覚、妄想、認知症などの多様な精神状態が起こる
ビタミンB12欠乏症
- ビタミンB12の極度の欠乏により発症
- 記憶障害、無気力、集中力の低下、妄想・錯乱などの症状が表れる
- 胃の切除手術をうけたことのある人に出現しやすいとされている
脳腫瘍
- 腫瘍により脳組織が損傷られることで発症
- 認知症だけが症状として表れる腫瘍の多くは、前頭葉にあることが多いといわれているが、手術により治療が可能
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